驟雨の標

困った人の長話(記述言語版)/晴れて今や東大院卒三交替会社員の名をほしいままに

電子音楽の華、鋭いものたち

久々に音楽の記事を書こうとして前回書いた音楽カテゴリの記事を見たら懐かしさで涙が出てきました。あの頃は朝から晩まで好きな事を無限に勉強している幸せ人間だったのを思い出しました。人生のギアが暴走し始めてから五年かかってそこまで辿り着いたので、またここから五年かけて次のジャンクヤードへ向かいましょう。

困難な夜には鋭い音楽を聴きます。
電子音楽は楽しくて、聞く事も慣れる事も困難なのに研ぎ澄まされた鋭いリズムを持つ音楽が沢山あります。前回はクラシックピアノと称して変な曲を色々紹介しましたが、今回はアーティストを紹介する形にします。またとびきり偏っていてコアな世界観、奇妙な音色の突っ走る音楽家を紹介する形に。

※本当は日本の電子音楽も紹介しようと思っていたけど、構造的に全然違い過ぎるので今回は海外の音楽家のみ紹介

 

KiloWatts
最初にあまりとっつきにくいものを紹介すると皆寄り付かなくなるだろうと思うので、敢えて私自身も音色に慣れるまで時間のかかった音楽家から。

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電子回路がショートしたようなノイズの響きが大変心地よい。一定のリズムの中に複雑な規則性を組み込んでゆき、単純なリズム同士が重なり合う事で極めて精妙で複雑なビートを刻む。一音ずつではただの耳障りなノイズみたいな謎の音でしかないものが組み合わさる事で極めて精妙な音楽として成立し、まさに壊れた電子機器が投棄されるスクラップヤードのような情景を創り出す。

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奇妙な音の響きが創り出すスクラップヤードはまた同時に、幻想的な電子の幻影のようでもある。心地よい一定のリズムの中に投影される遠い誰かの影と不思議な世界。ノイズまみれで霧のかかった視界の中に冴え渡る奇妙な音たちの世界に酔いしれる。

 

Mosaik

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理系ならばまず黙ってこの動画を見たら良いと思うのだ。空高く飛ぶスペースシャトルから落下してゆくブースターカメラの映像である。遠くなってゆく大地、孤独で真っ青な空、ただ太陽だけが輝く宇宙、近づいてくる海面、終わって行く世界、静かな海…。初めてこれを見た時には感動して静かに涙が流れた。世界は美しい。

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動画に使用されているのはMosaikというスウェーデンのアーティストである。一曲目"tournesol"はフランス語で「向日葵」を意味しているという。未知で暗闇な世界にゆっくりと日が昇って行き、向日葵が顔を上げるようにゆっくりと開花してゆく。そんなイメージで語られる幻想的な音がとても心地よい。

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二曲目"Rubik"、初めてMosaikを聞いたのはこの曲からだったがその時の衝撃を未だにまざまざと思い出せる。太古の昔に打ち捨てられた人間には理解できないオーバーテクノロジーで動く工場が主人を失った今でも独りでに動き続けているような、そんな冷たい孤独と謎に満ち溢れたサウンド。

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そんな独特で幻想的なMosaikの神髄がこの曲だと思っている。吹き渡る風から始まる爽やかで聞きやすいサウンド、優しく頬を撫でるような風たちの踊る明るく広い風景、誰かの声が聞こえてくるような光と広い空、開放的でありながらどこか寂し気に終わる姿、たった三分半に詰め込まれた美しい光と風のコントラストが絶妙である。

 

Plaid
「プラッド」と読むらしい。イギリスのエレクトロニカバンドである。エレクトロニカ筋の人に話を聞くと知らない人はいない大御所らしい。日本では「鉄コン筋クリート」に楽曲提供した事で有名。www.youtube.com

私が初めて聞いた曲は"Unbank"。最初は何が何だかよくわからない感じだったが、何回か聞いていたら突如として閃光が走るように理解が訪れ、それから70回ぐらいリピートして聞いた。秩序だったリズムの中に光を見出すとセロトニンがドバドバあふれ出す。割と中毒性の高い一曲。

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とっつきにくい曲ばかりではなく、もっとメロディックな曲も作る。深い深い広がり、暗い深海のように始まる世界にゆっくりと温かな光が差してゆく感覚。スキューバダイビング経験者なら分かるかもしれないが、よく晴れた日の夕方に潜るとこんな感じなのだ。キラキラと夕暮れに輝く水面を海底から見つめるとこんな音が鳴っていたのをよく思い出す。

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またこの帝国少年のイラストがぴったりすぎるぐらいぴったり合う。帝国少年はこういう画を描いてくれなくなってしまったので最近淋しいが、この曲を聞くと常にこういうごみごみ雑然としていて色々な恰好をした人たちが歩き回る奇妙で賑やかな街の情景が思い浮かぶ。これまた一定の秩序を持つリズムの中に様々な音たちがはしゃぎまわるタイプの音楽で、Plaidというアーティストの本領が発揮される瞬間である。