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驟雨の標

困った人の長話(記述言語版)

院試よもやま話4. 鉄火場のアホ(後編)

院試よもやま話 大学院入試

人生が掛かっている以上、一科目失敗したからと言ってへこたれている訳には行きません。

 

4. 鉄火場のアホ(後編)

次は生命科学の問題です。生命科学はかなり真面目に勉強したし、趣味で別の教科書を読んだりしていたから満点を狙えるはずだ!と思っているわけです。ところが現実はそう甘くないわけです。

大問1を解き始め、順調に問題を解いて行ったのはいいのですが、例によって例の如く大問1の一番最後の問題で詰まりました。

「クローン生物を作る方法を二つ以上解答せよ」

 あれ?クローン生物ってどうやって作るんだっけ?

確か教科書で読んだ覚えがあるけど・・・

もしかして度忘れしちゃった!?

あ、やべーわこれ完全に思い出せない

詰んだ・・・!

 

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諦めるな!

なんとかして解答を合成しろ!

そう、どうにかして解答を合成する以外にもう方法が全くありませんでした。いくら思い出そうとしても思い出せるのはごく断片的な知識だけ。そしたらその断片を繋ぎ合わせてそれらしい解答を自分の文章力で合成する以外に手だてがないのです。ひたすら必死になってそれらしい解答を書き上げました。(※後日解答を確認した所、頑張って書き上げた妙ちきりん極まりない解答でも部分点程度は十分にもらえると分かりました。正確な解答が書けなくとも、答案は絶対に埋めた方が良いと痛感)

その後も平たんな道のりではありませんでした。生命科学には大分自信があったのに、所々で記憶が丸ごと欠落している所がありました。満点を取ってやると意気込んでいたのに、恐らく80点も取れていないでしょう。

 

Day3

そろそろ心が折れてくる状況です。勉強したはずの物が何一つ発揮できず、散々絶望しながら三日目に入ります。体力も精神力も限界ギリギリの所を歩いている状態のまま試験会場に入ります。

小論文。

ずいぶんヘビーな奴が来ました。これは、もしかしたら今日ここで俺の人生は終わってしまうのかもしれない・・・という何とも言えない絶望感を抱えたまま、試験開始です。

小論文は大問6問中1問選択して論述する形式です。問題の内容は

  1. 酵素論とかなんとか
  2. 電磁波の問題
    (解けない)
  3. 線形代数で画像をコンピュータ処理
    (線形代数は苦手すぎて解けない)
  4. 血管中の血流の速度とかなんとか
    (化学工学は全然勉強していないから解けそうにない)
  5. 物理学の専門家じゃないと解けない謎の力学
    (私は物理学の専門家じゃねぇ)
  6. 忘れた
    (意味不明な分野の意味不明な問題だった事しか覚えていない)

いや惨憺たる展開です。6問あって、どうやら解けそうなのは1問目だけでした。というわけで1問目を選択し、問題文をもう少し真面目に読んでみようと目を凝らしたところ・・・

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よし勝てる!

ヨッシャ!ヨッシャ!

問題の内容は酵素反応速度論・アロステリック制御についてでした。それだけ聞くと難しそうな気がしますが、この内容、実は昨年の10月に自分でパワーポイントを作って後輩たちの前で講義した内容がそのまま出題されていました。他の人たちにとっては難しい問題でも、私の頭の中には完璧に叩き込んである内容だったのです。

普段はそんな事しない私が、この時ばかりは神様に感謝しました。頭の中で10秒間お祈りをささげて、息を深く吸います。

スーーーッ

(頭の中でBahram Attackが流れ始める)


Bahram Attack - YouTube

フッ!

その瞬間から私は人間ではなく、コンピュータになりました。目の前の問題について複数の思考を同時並列的に頭の中で巡らせ、激しく音を立てて呼吸し、猛然と解答用紙に己の頭の中にあるものを叩きつけてゆきます。シャーペンの芯が途中で何回もバキバキ折れ、遂には解答用紙に穴が開くまで徹底的にありとあらゆる知識を解答用紙の中に叩き込みました。

イケる!これは満点を取れる!

そこからはもう何も考えず猛然とシャーペンを解答用紙に叩きつけ、自分が呼吸する音だけが聞こえる時間が経過しました。

試験終了し、私はこの三日間で初めて心からの笑顔を浮かべました。

これはチャンスがあるかも!

 

と思ったのが間違いだった。

最後は面接です。面接まではかなり時間があったので、東大の図書室に入り込んで自分の研究テーマに関する周辺書籍を読み漁って過ごしました。私の受けた面接は自分の研究テーマを発表した後、口頭試問に答えるという形式でした。

非常に緊張している状態だと時間が長く感じられます。永遠とも感じられるような長い時間(実際には4時間程度)を図書室で過ごした後、遂に私の面接が始まりました。

 

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私「という訳で、私はこのような研究をしております。以上です。質問をお願いします」

面接官A「・・・」

面接官B「・・・」

面接官C「・・・んー。」

私「・・・?」

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面接官A「・・・パワーポイントには、大学院入学後に何をやりたいかも書き込むように事前に通知しておいたはずですが」

 

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私「えっ!?

 

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面接官A「君は自分の研究発表だけやりにきたのか?」

私「・・・」

面接官A「確かに募集要項には大学院入学後に何をやりたいかを書くように通知してあったはずだが」

私「・・・(半泣き)」

面接官A「まあいいですよ、じゃあ口頭で今それを説明してください」

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・・・

そこから先は地獄のような時間でした。私は面接に使うパワーポイント資料を作る段階からミスをしていたのです。最早自分のバカさを呪う他ありません。パワーポイントの不足を反映してか、面接官の先生方からは次から次へと難問奇問としか言いようがない試問が飛んできました。

面接官A「スキャホールドってどういう特性が必要だと思う?」

面接官B「マテリアルの力学的強度はどれぐらい必要?どういう条件でそれが必要になる?」

面接官C「分子量は何で測る?ああGPCか、じゃあGPCの原理を今ここで解説してみせてよ」

全て答えました。

全て答えないと本当に人生が終わってしまうので、意地でも全て答えました(泣)。

幸いにも全て私の知識の範囲内である程度までは答えられる質問でした。完全な正解を答えたという自信はありませんが、それでも問いに対する回答としてはそれなりのものを答えられたかなと思います。

 

そうして全てが終わりました。

 

ひとしきり大騒ぎして、さて、もう帰るかと思ったら、受験票を面接室に置き忘れました。自分のバカさを心の底から呪いました。どうしようかと右往左往していたらインド系と思しき女性が英語で話しかけてきました。気が動転していて英語を聞き取るどころではない上に、そもそもインド系の方の英語はすごく聞き取りにくいんです。何を言っているのか全く分からないまま更に状況が混乱し、私はホワイトボードに何か絵を描いて説明しようとしましたが、うまく伝わりませんでした。うまく伝わらないままインド系の女性はどっかいってしまいました。

幸いにもその後受験者が交代する隙を狙って面接室に入り、受験票を回収できました。

面接官A「これ持ってないと困るのは貴方なんだからちゃんと持ってなさい」

面接官B「いやいや大丈夫だから大丈夫だから」

面接官C「・・・(終始すごいニヤニヤ顔でこちらを見つめている)」

資料の段階でミスし、面接官の先生方にも迷惑を掛け、これは落ちたっしょ!としか言いようがない酷い状態でした。

 

私は茫然自失としながら帰りました。

人生が本気で嫌になりました。自分では大分努力したつもりだったのに、それは単なる甘えでしかなかったのかなと、酷く自分を責めました。

 

泣きました。

泣くしかなかった。